福島第一原子力発電所の廃炉は、人類が初めて直面する極めてチャレンジングなプロジェクトです。溶け落ちた核燃料を回収するだけではなく、損傷している原子炉や建屋を安全に管理し、最終的には廃棄物として安全に廃棄するという長期にわたるプロジェクトを全体俯瞰することが求められています。具体的には、放射性物質の閉じ込めを確保しつつ、燃料デブリを含む放射性廃棄物を調査・サンプリング・分析し、安全に移送・保管・処理・処分する必要があります。
このためには専門分野を横断した統合的な視点から技術を開発する必要があり、原子力工学だけではなく、機械工学、ロボット工学、材料工学、化学工学、土木工学など様々な工学を結集して、先端技術を応用した新たな発想に基づく研究を行うことが重要となります。また、技術開発とともに、プロジェクト全体を俯瞰する統合的なマネジメント能力の育成も必須であり、研究実施を通して若手人材を育成し、統合的な新技術開発を進めることができるリーダー人材を継続的に育成することも重要な課題です。
このような背景から、本講座では、
(1)俯瞰的に廃炉の課題を理解した上で統合的戦略を構築するとともに、戦略で必要な新技術開発について研究を行います。
例えば、
・燃料デブリ取り出しのための燃料デブリ組成の推定手法の構築
・燃料デブリ粉砕・取出で放出されるサブミクロン粒子の捕集技術の開発
・新たな燃料デブリ取り出し工法の検討と工法実現のための新技術の開発
・原子炉格納容器内部調査や燃料取り出し時の監視に重要な遠隔技術の開発
など。
(2)講義や学生研究指導を通じて、廃炉人材育成を推進するとともに、俯瞰的な視野をもつ学生を育成いたします。また、廃止措置持論(大学院)、福島学(大学院)、博士・修士・学部の演習等を実施し、廃炉及び福島復興に関する教育を推進します。
(3)研究体制としては、廃炉事業を推進している日立GEニュークリア・エナジー株式会社、東芝エネルギーシステムズ株式会社、三菱重工業株式会社、東京電力ホールディングス株式会社と連携を図り、実プロジェクトあるいは二の矢として代替となりうる技術の開発を目指します。
Official HP: http://www.robot.t.u-tokyo.ac.jp/ide/